第10回コンクール 優良賞作品


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安藤正雄「愛すべき悪漢たち」(浅田次郎『天切り松 闇がたり』)


 私は数年前に脳卒中を患い、半身麻痺の障害を抱えています。
 
思うに任せぬリハビリの日々を支えてくれているのは、本を読む楽しみです。
 好んで読むのは勧善懲悪の物語。胸がスカッとする上、ストーリーが明快で、肩が凝らないのが魅力です。正義が必ず勝ち、悪が滅びるパターンです。テレビドラマでいえば『水戸黄門』や『半沢直樹』といったところでしょうか。

 でも、小説の世界はちょっと趣を異にして、悪人が活躍するものもあるようです。
 「悪漢小説」と呼ばれる作品ジャンルです。最近読んだのが、そのど真ん中の『天切り松 闇がたり』という物語でした。本来は悪人の典型とされる泥棒たちが、悪い奴らを懲らしめて大活躍します。
 愛すべき悪漢たちの“勧善懲悪”ぶりに胸が躍りました。
 あの高倉健さんの『網走番外地』でよく見た、悪典獄(刑務所長)に泥棒一家の親分が一泡吹かせる痛快なシーンには、ストレスも吹き飛びました。

 カッコいい悪漢の中でも心惹かれたのは、盗賊一家の紅一点の女すり。
 小粋できっぷが良くて、道で出会った誰もが振り返るほどの美人というのですから、年甲斐もなく胸がときめいてしまいました。
 作中の女性に「老いらくの恋心」を抱いているうちに迎えたエンディングでは、不幸な少女のために悪漢たちが夢のような舞台をあつらえてくれました。まさに強きを挫いて弱きを助けてくれたのです。ホロっとしました。

 「本は友達」と言われます。この本は私にとって友であるとともに応援団にもなってくれました。痛快で、ちょっと切ない大人のメルヘンをプレゼントしてくれた悪漢たちに感謝感激。
 読書は心の栄養になり、時にはストレスも吹き飛ばし励ましてもくれる…そう気づきました。この愛すべき“悪友”たちとの出会いは、この上ない心のリハビリになりました。

(738字)(72歳、男性、愛知県)


 ●使用図書


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