第3回コンクール 優良賞作品


-Sponsered Link-


新川瑶子「私が『 i 』から受け取ったもの」(西加奈子『 i 』 )


 主人公のアイは私にそっくりだった。私の中にいる私をみているようだった。

 私はこの本を読んでいるとき、いろいろなことを思い出した。

 小学校の社会の教科書に、飢餓に苦しむ子どもの写真がうつっていて、世界には、今、苦しんでいる子どもたちが沢山いることを知ったときのこと。戦争の平和学習や祖母から、日本で起きた戦争のことや広島・長崎の原爆のことを歴史として教えられてきていた私には、衝撃的だった。歴史ではなく、今もまだ終わっていないということ。どこかも知らないところ、けれども、同じ地球のどこかで同じ人間によって繰り返されている紛争、差別、テロが山ほどあること。

 それからというもの、私はふとした時に、主人公のアイのように幸せな毎日を送ることが辛くなる時があった。
 毎日美味しいご飯を食べて、くだらない話をしながら笑って、家族や友人と過ごして、趣味をして過ごす毎日に。それが楽しくて、そんな風に感じる私に。周りにも恵まれているこの環境に。なんて傲慢なことを言っているのだろうと自分でもわかっている。それでも、どうしても、どこかで不甲斐ない気持ちになる自分がいた。

 大学生になって、カンボジアの子どもたちに教育支援をしたり、インドで介助ボランティアをしたりし、自分の目で肌で世界の現状を見たりもした。一方で、帰ってきて自己満足で終わっている気持ちが毎回拭えない。帰ってきた後の感想は、「結局自分はなにがしたいんだろう。やっぱり私の考えが傲慢なだけなのかも。世界なんて変わらないのかな。こんなことを考えることに意味があるのかな。」と言ったことばかりだった。

 そんなときに出会ったのが、この本だった。

 救われた。

 「誰かのことを想って苦しいのなら、どれだけ自分が非力でも苦しむべきだ。その苦しみを、大切にすべきだ」
 これは、主人公アイのかけがえのない親友であるミナがアイに言った言葉だ。私はこの本を読み、この文章を読んだ瞬間に、目頭が熱くなってきて、流れてきたあの涙は、どんな言葉でも表すことのできない、心のどこか奥底から溢れでてきた涙だったのは間違いない。

 私はこの言葉を誰かに言われたかったのかもしれない。
 そのような言葉に出会えたこと、そして、私のことをよく知ってくれて、「主人公に似ているね。」って気づいてくれて理解してくれるミナのような友人がいることが、今、幸せで愛に溢れていることなのだと気づく。

 私が生きている間にどれくらいこの世界がより良いものに変わっているかはわからないが、社会人となった私は、「障害のない社会をつくる」といったビジョンを掲げた会社で働いている。家族・恋人・友人・自分はもちろんのこと、近くにいる人たちにとって、少しでも愛を与えられるような人でありたいと思う。

(1128字)(23歳、女性)


 ●使用図書


※掲載作文の著作権は当コンクール主催者にあります。無断での転用・転載を禁じます。


-Sponsered Link-