第9回コンクール優秀賞作品


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りりこ「雨の日こそ動け」(ルイス・セプルベダ『カモメに飛ぶことを教えた猫』)


 「ミュージカルを観たい」
 友人の誘いに応えて見つけてきたのが今回の作品だ。観劇に集中するために先に中身を知りたかったので本を読んだ。
 子供向け作品だったので大人の自分は余り楽しめないだろうなと思っていた。本を開くまでは。

 「何より恋焦がれていた。このありふれた雨に」という詩を理解することにとても時間がかかった。
 「雨を好きだ」という人は、余り見かけたことがない。ましてや豪雨でもない、霧雨でもない「ありふれた雨」である。

 この読書感想文を書いている今、私は転職活動中である。
 転職活動となるとどれだけ即戦力になれるかが問われるのだが、三年間も勤め上げたのに私には何もスキルが身についていなかった。
 内定を獲得している人たちは就職してからも勉強を続けて資格取得を行う等、自身の市場価値を高めていたのだ。私には何も価値がない。過去の自分を悔やみ、将来の自分を心配している。

 ある日、前職の同期と話す機会があった。
 このご時世の為、所属部署がなくなってしまったそうだ。成績も良かったのに無くなってしまうとは想像もしなかった。
 次の配属先も決まっていないようで、さぞ辛いだろうと同情をすると、「私だけじゃないよ。みんな大変だよ」と言った。
 その時、まさに今の状態というのは「ありふれた雨」ではないかと気づいた。自分だけ、私だけ酷い目に遭っていると思っていたらそうではなく、皆平等に雨に打たれているのだ。

 親鳥も居ない、飛ぶ方法を教えてくれるのは猫だけ。雨の日にフォルトゥナータは空を初めて飛べるようになる。
 人間は雨の日になると「買い物は明日でいいや」といったようにやるべきことを後回しにしがちだ。しかし、フォルトゥナータが飛べた姿をみて、私は雨の日こそ動くべきだと考えた。
 止まない雨はない、という言葉もあるように、いつか絶対必ず晴れる日が来ると、フォルトゥナータもゾルバも皆知っていたから飛べたのだと思う。
 そして、雨の日のような最悪の状況の中で飛べるのなら、晴れた日にはもっともっと高く速く飛べると思った。

 私はとにかく雨を必死に避けて生きてきた。
 これからは雨の中でも一生懸命行動に移していこう。濡れてもいい。いつか晴れることはわかっている。晴れた時にもっと大空高く飛べるように。
 そう思いながら、梅雨空の下で私は洗濯機を回す。

(947字)(27歳、女性、兵庫県)


 ●使用図書


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