第10回コンクール 優良賞作品


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たなたなか「整形狂いが見た目問題の本を読んで」(岩井建樹『この顔と生きるということ』)


 私は目と鼻と輪郭を整形した。
 整形前と比べて舐めた態度を取られることが減り、自信がついて堂々としていられるようになった。整形は100%成功したと感じている。たとえ誰に何と言われようとも後悔はしていない。
 
顔はかわいいに越した事はないのだ。容姿が整っていることこそ幸せの秘訣であり、絶対条件だ。

 そんな私が手に取った本、『この顔と生きるということ』。
 本書は「見た目問題」という、普通とは違う外見の人たちが生きづらさを感じたり、差別を受けたりすることを取り扱っている。
 病気でも何でもなく、ただブスだというだけでたくさん嫌な思いをして苦しんできた私からしたら不思議でしかたなかった。なぜなら、表紙の当事者たちの写真がみんな明るい笑顔だったからだ。

 当事者の印象的な言葉がある。
 「顔の半分にペンキを塗って街を歩けますか? 顔の差別で人は死にます。普通の外見でも、いじめられる子がいる世の中で、顔が普通と違えば格好のいじめの対象になるじじつがあります」
 この言葉を読み、やっぱり美しくなければ駄目なのだ。そう思った。
 もちろん当事者は何も悪くないし、悪いのは多様性を受け入れられない社会なのだが、整っているに越したことはないのだ。これが社会の真実。もっと整形を頑張ろうと思った。

 ところが5章の「見た目を武器にする」を読み少し考えが変わった。特に心を動かされたのは、ちびもえこさんという、身長124cmという子供の背丈に大人の顔であることを生かして活躍するダンサーの人の言葉だ。
 「子どもが低身長で悩んでいる親が、私のインスタを見て、『勇気をもらいました』とメッセージを送ってくれました。私が人生を楽しんでいる姿を見て、少しでも子どもの将来に、希望を見いだしてもらえたのなら、うれしいです」
 この言葉を読んで、自分が出来ることを精一杯やり、個性や強みを見つけることで、見た目が少し違っても楽しく幸せに暮らすことも可能なのだと驚いた。幸せになりたい一心で、病気でもない体に散々メスを入れてきた身としては衝撃的だった。

 先日yahooが、一部の身体的特徴をコンプレックスであると表現する広告を規制すると発表した。
 外見で選別される世界から少しずつ変化してきている。この本を読んだ者としては、世の中には多様な人々がいることを頭の隅に置いておきたい。
 なぜなら、事件や事故によって後天的に見た目問題を抱えることになるかもしれないし、将来、自分の産む子どもが見た目問題の当事者である可能性だってある。
 しかしながら、見た目問題が全くなくなることは、なかなか難しいだろう。
 それならいっそのこと、人類みんな目が見えなくなればいいのに。そしたら私も整形中毒から抜け出せるのにな。

(1,112字)(25歳、女性、茨城県)


 ●使用図書


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