第7回コンクール 優良賞作品


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Mia「昨年出せなかった感想文~鬱と私、それでも生きています~」(北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』)


 「私にとって、仕事をやめるよりも簡単なこと」
 この文章から一瞬にして頭に浮かんだものは、ただ一つだけだった。

 私は鬱を患わった。
 大袈裟だと思われるかもしれないが、闘病生活は想像を絶するものであった。
 恥ずかしながら私は、鬱といえば抑うつ、意欲の低下、不眠等の症状が出るものなんだろう程度の知識しか持ち合わせていなかった。
 ところがだ。実際に自分が経験したものは、言い表せないほどの苦痛の日々。悲しいだとか、苦しいだとか、そんな感情を抱くことさえも、私にとってはたまらないことだった。
 「こんな私が、苦しいだなんて。何を思っているんだ」 自分が苦しいと思うことに罪悪感を覚えるほどまでに、自己肯定感は低下していた。
 動けない。眠れない。
やっと眠りにつけたとしても、目が覚めては「今日」が来たことにひどく落胆する。 明日が来ることが何故こんなにも怖いのか。

 私は休職をし、闘病生活を送っていた。だがそれは、所謂「休み」ではない。文字通り、病との闘いの日々。絶望との闘いの日々。心が休まることなんてなかった。
 何故私はここにいるのか。何故私は生きているのか。何故、何故私はこんな風になってしまったのか。
 
答えなんてなかった。とにかく毎日、どう過ごせばいいのか分からない。目が覚めて自分が生きていることが、意識があることが、何故こんなにも苦しいのか。自分の意識がここにあることに耐えられない日々を過ごした。
 もう、わけが分からなくなってしまいたい。
 今この瞬間を生き抜くために、考えることを止めるために、私は自分を傷付けていった。
 傷付けたところで、楽になんてなれないことは百も承知だ。分かってはいるのだ。それでも私は、自分を傷付けずにはいられなかった。絶えず私を襲い続けてくる不安、恐怖、絶望、焦燥感、あらゆる感情からとにかく逃げ出したかった。
 逃げ出すための方法。思い浮かぶのはいつだって、ただ一つだけだった。

 『ちょっと今から仕事やめてくる』 この著書と出会ったのは、私がまさに闘病生活を送っている時であった。
 状況は違えど、主人公と自分が重なって見えた。 何度も読んだ。読む度に主人公と自分が重なり、涙が頬を伝う。胸が締め付けられる。
 精神的に追い詰められた人間がどのようになっていくのか。この本は、それを巧みに描写していると思う。
 今まさに、光の見えない真っ暗なトンネルの中で闘病生活を送っている人。そのような状況の人が身近にいる人。誰かを追い詰めているなんて思ってもいない人。 私はこの本を、多くの人に読んで欲しいと思っている。
 追い詰められた人間が、辿り着く先。簡単にそれに辿り着いたわけではないのだ。壊れそうな自分と闘い続けた末に、それしか見えなくなってしまう。

 考えて欲しい。知って欲しい。

 同じ状況を経験している多くの方。闘病中は、文字を読むことさえ難しいと感じる人が多いのではないかと思う。私自身がそうであったからだ。少しずつ、一文字ずつでも、この本を読んで、心が洗われるその瞬間を体験して欲しい。
 月並みな言葉であるが、あなたは一人ではない。同じ経験をしている人は多くいる。辿り着いた先の考えが私と同じである人は、大勢いるであろう。

 はたまた、どうしてそんなことを考えるんだ、なんて思う人だっているだろう。そのような人には、ただ知って欲しい。苦しみと闘い続け、向き合い続けた末のことなのだと。

 一人でも多くの人が、この主人公のように苦しみから救われること。そして、苦しいあなたに少しでも笑える瞬間が訪れることを、私は心から祈っている。

(1447字)(女性)


 ●使用図書


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