第9回コンクール優良賞作品


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麻月あゆみ「未来への希望」(スーザン・ケイン『内向型人間のすごい力』)


 私はこれまで、自分は他の人とどこか違うと生きづらさを感じていた。
 その“
どこか”という答えがこの本でわかった。敏感さや内向型といった特徴だ。
 その答えだけでなく、そういった敏感さや内向型を持つ人はどうすればもっと生きやすくなるのかも、この本は示してくれた。

 通勤電車の中で読み進めていたのだが、憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれる力強いパワーを毎回もらっていた。
 敏感さや内向型はマイナスな特徴ではなく、むしろ社会で大いに役立つ才能だという。そんな風に考えたことはこれまで一度もなく、とても衝撃的だった。

 著者は米国人で、根拠となる実験や取材も欧米が中心だが、欧米はもちろん、日本でも積極性やチームワークを高く評価する傾向があると思う。
 ただ、欧米では学校教育から積極性を重視するのに対し、日本は少し状況が異なるだろう。
 日本は学校教育という面では、積極性やチームワークよりも、従順さ、真面目さ、勤勉さを重視しているように感じる。真面目でよく勉強する、どちらかというと内向型の学生の方が優等生として評価されているように思う。
 しかし、学生を卒業して社会人になると、そういった優等生は社会で評価されにくい。積極性やチームワークが重視され、外交型の人がより良い評価を受ける。この点が欧米よりも状況を複雑にしているのではないかと考えた。
 学校で教えることと、社会で求められているものが異なっている。その矛盾が若者の離職、ニート、引きこもりの一因でもあるように思う。

 ウォズニアック氏の「ひとりで働け。独力で作業してこそ、革新的な品物を生みだすことができる。委員会もチームも関係なく」という言葉は、今の社会や会社に馴染めない人にとってとても勇気のでる一言だ。
 目標とする場所や終着点を会社ではなく「ひとりで働く」こととしたら、内向型の人は楽しく感じるのではないだろうか。

 なぜこのようなことを考えたかというと、現に今、私が会社で壁にぶつかっているからだ。
 上司や同僚からのちょっとした指摘ですぐ落ち込むし、周囲の視線が気になり仕事に集中できなかったりと、毎日自己嫌悪が続いていた。自分のように敏感すぎて、会社に馴染めない、仕事に集中できない内向型の人は多いと思う。
 しかし、内向型の人にとって心地よい、一人で集中できる環境を実現できたら、救われたり、才能を発揮する人はたくさんいるのではないか。例えば、ネットカフェみたいに一つひとつ区切られたスペースで働ける環境があれば、集中して働けるかもしれない。

 私は今の仕事を何とか踏ん張って続けていきたいと思っている。それは生活のためでもあるし、内向型の私は内向型なりに自分の仕事にアプローチし、いつかきっと上司や同僚に認められたいと思うからだ。
 これまでは自分の内向性、敏感さを認識しながらも、それを受け入れ、行動に移すことができていなかった。内向的で敏感という理由で多くのことを諦めてきたし、現実から逃げてきた。
 しかし、それでは内向型の持つパワーを活かせないとこの本は教えてくれた。

 海を怖がる子どもに少しずつ慣れさせるように、私も少しずつ前に進みたい。
 同僚と比べたりせず自分のペースで仕事をする。直接会話する回数を少し減らして、その代わりメールで伝える。
 今の仕事環境は私にとっての最適な刺激レベルよりも高いけれど、自分なりに落ち着いて仕事ができる方法を考えていく。筆者のいう回復する場所、時間も作りながら続けていきたい。
 試行錯誤で時間のかかるプロセスだと思うが、それができたときは誰よりも強いパワーを手に入れられると思う。

 そして、それを乗り越えられたときには、私と同じように悩んだり苦しんでいる人の助けになりたいと強く思う。それが私にとってのコアパーソナルプロジェクトなのかもしれないと気づいた。
 自分自身、敏感さや内向性に悩んできたからこそ、それを受け入れて内向型なりのアプローチをして楽しく生きる、そんな生き方を発信し、少しでも生きづらいと感じる人が減ったら良いと心から願っている。
 
発信の仕方は書くことが良いかもしれない。私は書くことが好きで、この感想文を書いているときも、自己満足かもしれないが、自分の考えやこの本から教えてもらったことを伝えられることに、ワクワク感を得られた。
 一人で書いているから孤独だが、孤独ではない。面白いと思ってくれたり、興味深いと思ってくれる人が一人でもいればそれは意義のあることで、社会とつながっていると思う。そんな社会との関わりも生き方のひとつだと思う。

 「ランの花は枯れやすいが、適切な状況のもとでは強く育ち、みごとな花を咲かせる」
 この言葉がとても心に響いた。
 内向型だから生きづらいで終わるのではなく、内向型だからこそできることを考え、自分に合った生き方で楽しく生きていきたい

(1,956字)(27歳、女性、東京都)

ブログ : https://ameblo.jp/8864mini/


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